2008年10月29日水曜日

釈迦ガ岳-鈴鹿巡り・その5-


 10月18日(土) 快晴になったこの日、昨年から続けている鈴鹿の山を北から順に巡る山行計画を実行しようと、釈迦が岳に行ってきました。
 その二、三日前から、「今年最後にアルプス級の山に登りたい!」と思い、日帰りの空木岳を計画していたが、金曜の仕事を終えてからの準備→夜の高速運転が結構億劫になっていたこともあって、迷いに迷ってやっぱり去年続けていた鈴鹿の山を今年一つも登らない訳にはいかないと思い直し、決行しました。

【 知らなかった豪雨の爪痕 】

 朝6時に起床して6時半に出発、高速を乗り継いで四日市インターを下りた後、鈴鹿スカイライン方面へ向かう。朝明ヒュッテにはR422(鈴鹿スカイライン)からR306を少し北上するのだが、道端に「朝明ヒュッテ方面迂回路」の看板が…。「?」と思いながら県民の森からの迂回路で朝明ヒュッテに向かうが、近くなるにつれて土砂崩れの工事現場がチラホラ現れました。「あぁそうか…。」とようやく御在所の藤内小屋のことを思い出し、ここも被害にあってたんだと実感。

 ヒュッテの有料駐車場(500円)には2、3台の車が止まっていて、単独の男性が出発の準備をしていました。自分のすぐ後にこれまた単独の女性がいて、7時30分時点で5,6台が止まっていました。駐車場のおじさんは気さくな人で、9月2日夜からのゲリラ豪雨でこの駐車場も砂と石で埋め尽くされたことを話していました。
 駐車場には三重県警の人と多分地元山岳会の人がいて、登山道が一部変更になっていることなどを説明してくれました。登山届の記入を済ませ、記念品のタオルを貰って、7時45分に出発しました。

【 荒れ放題の登山道 】

 庵座谷登山道はテント村の奥から沢伝いに上がって行くコースですが、テント村の奥は土砂崩れがあってショベルカーが工事をしていました。

 林道から逸れて沢を横切ったところから本格的な山の道になるんですが、いきなり目印のテープが見当たらなく、20分ほどロス。
 自分より先に出発した単独の女性と男性は、どうやってここを登っていったんだろうと不思議に思いました。(何度も来ている人なのか?…)




 去年も霊仙の近江峠までの尾根、御池岳でもコグルミ谷の登りを間違えたりと、鈴鹿の山は踏み後がハッキリしていなくて、おまけにテープや目印のペンキの間隔も広すぎて、足元ばかりを見ていると絶対迷います。 今年はメジャーな山ばかり登ってきたので、改めて鈴鹿の「手強さ」を実感します。
 登山道はいきなり急登で、さっそくロープがでてきました。40分ほどして、庵座の大滝と猫岳が顔を見せましたが、それと同時に目の前の登山道が、横からなだれ込んできた土砂と流木で、滅茶滅茶な状態に…。

 一足踏むと、ザザーッと崩れていく石屑を急いで渡り、どうにかクリア。しかし、庵座の大滝に下る道がどこにあるか分からず、結構な斜面だったので、滝のそばには行けませんでした。

 登山道は滝の右側を巻いて登りますが、この辺りも急。鳳凰のドンドコ沢の登りよりも全然角度がキツイ。登りはほとんどストックが役に立たず、手を使う機会が多くありました。

 その後、沢をどんどん詰めて行きますが、テープを探すたびに足が止まり、立ち往生。土砂災害で荒れているのもあるけど、もう少し整備されていないと、これじゃ初めての人は迷うばかりだよ~っと思いながら、ようやくガイドにも載っていた鉄パイプの堤を発見。左の崩れた箇所を登ると、沢が二手に分かれていていました。



【 間違った沢を登る 】

 松尾尾根の頭と大陰のガレが右手に見えていたし、駐車場で貰った地図もなんとなく右手の沢をさしているようだったので、壊れてきそうな岩だらけの沢を攻めて行きました。
 しかし、一向に目印が見えてこず、さすがに間違っていることに気づきだした頃には沢を半分以上登っていました。
 下るのも悔しいので余横に逸れて登山道を探しますが…見つからず。仕方なく鉄パイプの堤まで下ると、左側の沢にテープを発見。ようやく復帰しましたが40分のロス。



 その後、三段の滝が現れ、その左を巻く長いロープの急登にビックリしながら、沢を横切るロープが張ってあるのを発見。×印があったので、右側をみると、長いロープのかかる急登が見えました。

 「これでようやく尾根に出れる」という思いで一気に登ると、木の無い所に出ました。目の前に大陰のガレが現れ、振り返ると御在所から雨乞岳と猫岳が見えました。

 山は、頂上付近がようやく紅葉し始めた感じで、本格的な紅葉はもう少し寒くなってからのようです。



 やっと突破した安堵で少し休憩して、松尾尾根の頭までの最後の急登を行きます。

 背の低い木々の中をロープや木の根に捕まりながら必死になって上っていくと、ついに松尾尾根の頭に到着。 息切れで座り込んでしまいました。


【 標識のなかった山頂 】

 松尾尾根の頭からは、5分で釈迦が岳山頂に到着。何とも狭い頂上で、伊勢平野と員弁方向が見渡せましたが、肝心の釈迦が岳の標識は何処にも無く、木に括り付けてあった山岳会の小さいプレートだけしかなかったのでそれを写真にとって、数分で羽鳥峰に向かって出発しました。


 尾根歩きは気持ちよく、時々振り返ってガレを写真に取りながら、猫岳を越えて、緩やかな下りを楽しみます。ブナの大きな木もあって、風が吹くととても気持ちよかったです。ガイド通りの時間で羽鳥峰が見えてきました。これまで誰にも遭遇しなかったが、先行していたパーティを発見。
 しかし、自分が到着する前にそそくさと下っていきました。白いザレ場の羽鳥峰を独占しながらおにぎりを食べます。

 昔、小学生の頃、家族でよく鈴鹿の山に来ました。ある時、眼下の林に光る物体を発見し、父以外のみんなはアルミのシートが引っかかっているだけだと思ってたのに、 父だけは

「あれはどう見ても”UFO”に違いない!」

言い張って、どうしても見極めたいと、自分だけでどんどん光る物体の方へ下っていきました。暫らくして「やっぱビニールシートだった」と言いながら上がってきた笑い話があって、最近親に言ったら、それがどうも羽鳥峰の話だったということが分かり、なんとなくこういうザレ場だった事は覚えていたけど、どの辺だったんだろうと見渡しましたが、いまいち「ここだ」という実感がわかないままでした。


【 最後まで彷徨った下山道 】

 林道コースをカップルと犬が上がってくるのを見ながら、12時前に沢を下り始めます。暫らくは木々の中を慎重に下っていくのですが、沢に出ると、またまた土砂崩れで大荒れ状態。


 石垣の砂防堤をロープで下って、林道に出るはずが、林道が見当たらず、砂防の堤にぶち当たるもあまりにも高いので、ここは下りないだろうというのは分かったけど、さて、どこに行けばいいのやら。

 「ここに来てまでもまだ迷うか…」とうんざりしながら石垣のロープまで戻ると、沢の左手にテープ発見。何となくの登山道を見つけて、下っていくと林道というか、車なんぞは到底通れないデカイ石コロが露出する道に出ます。
 そのままどんどん下ってくと、やがて車も通れる未舗装の林道に変わり、大きくカーブすると舗装道路になり「砂防学習センター」の公園が現れます。
 伊勢谷小屋は人影がなく、橋の欄干に布団が干してありました。その下の西山荘にはデイキャンプの家族連れなどがにぎやかに集っていました。
その前にすれ違った乗用車が下ってきて、運転している男の人が、釈迦が岳への登山道の様子を尋ねてきました。 
自分は初めて来たので、かなり荒れていて目印のテープが無くてかなり迷ったこと、しかしながら全く引き返さないとどうにもならないという箇所もなく、尾根歩きは天気もよくてよかったことを話しました。
 13時10分に無事駐車場に到着。朝方いた県警の人や駐車場のおじさんの姿はなく、自分より先に出た男性の車はなくなっていたが、単独で出かけた軽装の女性の車はまだあったので、ひょっとしたら国見方面へと足を延ばしているのか?と思いながら、帰り支度をしました。

野生のサルが登山口にいたけど、すぐに隠れてしまいました。




 帰ってきて調べると、釈迦が岳庵座谷コースは通行可能とはいうものの、最近まで見合わせた方が賢明だったことがわかりました。翌週からは鈴鹿と考えていたけど、御在所方面はスカイラインが通行止めだし、今年はちょっと無理っぽい様子です。




 今回は、迷った分のロスがたたって、庵座大滝~松尾尾根の頭までが、標準時間の40分オーバーでした。やはり、沢の荒れ様は想像以上で、これが一夜にして起こったのかと思うとぞっとします。多分ものすごい音だったんでしょうね…。今しがたは紅葉シーズンだし、鈴鹿の山にとっても今がかきいれ時なので、地元の人達は大変だろうなと思います。

 登山道の維持は金銭面や環境面からも大変な労力だし、失われたものも大きいけど、昔よく登ったこともあって、個人的に鈴鹿の山はそれぞれが特徴あって好きだし、また紅葉や新緑の時期ににぎやかさや活気が戻ってくるようになってほしいと思いました。